凡コース列伝 in JAPAN

第1回「小豆島シーサイドゴルフクラブ」

生まれて初めて瀬戸内海に浮かぶ小豆島を訪ねた。香川県の高松からフェリーに乗る。
晴天のもと、ゆったりのんびりと船は走る。甲板に出ると潮風がとても気持ちよい。
小さな旅の宿に到着し、鮑や栄螺など瀬戸海の幸に舌鼓を打つ。素麺もこの島の名産で生麺の旨さは驚愕ものだ。映画『8月の蝉』では永作博美が演じる野々宮希和子が素麺作りをしながら奪った子供を育てた。子供と寒霞渓に行き、一緒に見た瀬戸内海に浮かぶ小島を自分も見た。
秋の寒霞渓は紅葉に染まり格別に美しかった。

小説『二十四の瞳』の舞台も訪ねた。ここは映画の舞台にもなっており、今では記念館となって、その映画も上映されている。若い女性教師が、戦地に赴く生徒に向かって「生きて帰ってくるのよ」と小声で語るシーンが胸を刺す。「お国のために死ぬ」のを当たり前としていたこの時代に、教職に身を置く人間のこの言葉の意味は重い。
今再び日本が急速に軍事色を帯びる中、子供たちを守る女性たちの発言や行動こそ、大きな力になると思う。日本の男は所詮、「まっとう」が見えなくなる愚か者ばかりだ。

小豆島の隠れた名宿、真理にも泊まった。蔵のような離れでオリーブ牛を食した。小豆島の綠鮮やかなオリーブ漬けは天然塩にミネラル分が多いからか、淡く柔らかい味わいで頬が綻びるが、そんなオリーブを食べて育った牛の肉がまずいわけがない。思わず手を合わせしまう。
その真理の主人が小豆島にゴルフ場があることを教えてくれた。予定などなきに等しい私は早速行ってみた。島の唯一のゴルフ場、小豆島シーサイドGCは島の東、山を駆け上ったところにあった。

第1回「小豆島シーサイドゴルフクラブ」

クラブをレンタルしたところ、大型チタンだったが、結構古びている。
スタートとする10番は距離の短い打ち下ろし。右が山の法面で左が崖のOB。ただの狭い山岳コースと思いつつ、アイアンで軽くポンと打って出た。ハイキング気分でセカンド地点まで歩いてびっくり。眼下に見えるグリーンの向こうは青々とした瀬戸内海。空も真っ青。いきなりの景観の良さに息を呑んだ。
11番はティグランドから瀬戸内海を見下ろすパー4。気分は爽快、痛快。グリーンはさほど刈っていない高麗だけに戸惑うが、そんなことなどどこ吹く風。さらに目の真下に打つ12番パー3、2打目から打ち上げとなる13番と顔がにやけるほど面白い。その後も1打1打慎重に打たないと大叩きする怖れがあるが、どのホールからも輝く海が見え、その美しさと難しさに天女のコースといった趣だ。
アウトも素晴らしい。3番は切り立った岩肌目がけて打つ谷越えのパー3。このコースは海だけでなく、あちこちに奇岩が顔を出す。天狗でも出てきそうな雰囲気が漂う。こうしてやってきた7番。谷を越え、息絶え絶えに急斜面を登り、グリーンに辿り着いて、何気なく振り向くと、クラブハウスの向こうに大海原が広がる。
苦しみが嬉しさに変わる瞬間。山の頂に立った登山家の気分が味わえる。そこで一句。
「打ち放ち、上り果て、振り向けば青い海」
もはや景観だけなら、川奈の比ではない美しさがわかる。確かにここ、小豆島シーサイドGCは凡コースではある。あるが、これほどのオーシャンビューのコースはそう多くはないはずだ。

春は桜が咲いて美しく、夏は海風が気持ちよく、秋は紅葉が素晴らしく、冬は六甲が雪でも楽しくプレーができる。フェリーに乗れば関西からもあっという間に到着可能。日本にこれほどの極楽コースがあったとは。恐るべし小豆島なのであった。

第1回「小豆島シーサイドゴルフクラブ」

小豆島シーサイドゴルフクラブ

〒761-4403
香川県小豆郡小豆島町当浜乙185—4
電話 0879-84-2000
料金はビジターで、
平日8,500円(水曜昼食付き、火曜は8,300円)、
土曜10,000円(昼食付き)、日曜祝日112.00円。
詳しくは http://www.olive-resort.jp

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