エビデンスGolf ジュニア(小学校期)編 Vol.5


【著者】鈴木タケル(日本プロゴルフ協会会員)、
    一川大輔 (東洋大学 理工学部生体医工学科)
【監修】坂井昭彦(The 蔵ssic)
●テーマ:ジュニアゴルファー各世代別における技術目標や練習量に関する指針



エビデンスGolf(ジュニア編)

 これまでの項では、子供の相対年齢を考慮し指導することや、14歳くらいまでには、単一種目ではなくデュアルスポーツを実践することが重要であることを説明してきました。
子供を対象とした発育発達に関する研究では、走・投・跳に関する報告は多いのですが、打撃動作がいつからどのように発達していくのかということを調査した研究は国内外とも報告の数が極めて少ないといえます。
またゴルフにおいても世代別にどのような練習をどのくらい行い、技術的な達成指標を示したものはほとんど見当たりません。
そこで、今回は、ジュニアゴルフの先進国カナダがおこなっているLTPD(Long Term Player Development:長期選手育成)プログラム(2015年度版:引用1)を参考に、世代別のゴルフ練習方法と技術的な達成指標等について検討し、ジュニアの世代ごとにおける達成指標を考えて行きたいと思います。



エビデンスGolf(ジュニア編)

 この世代での達成指標は、あらゆる面での「基礎」の学習に焦点が当てられています。

・運動能力の開発(身体リテラシー)
「Agility:俊敏性, Balance:バランス, Coordination:調整 , speed:スピード」の発達を目指す。
この総称をABC‘sとし、基本的な運動スキルと身体能力の開発を促していく。
・運動エクササイズの実施
可動性、屈曲、伸展、側屈、身体各部の回旋に重点をおいたエクササイズを取り入れる。
・ゴルフの用語や知識を紹介
ゴルフ用具に関する専門用語(クラブフェース、トー・ヒール、シャフト、グリップ)やゴルフをプレーするうえで必要な知識を学ぶ。
・パッティング、チッピング、フルスイング、グリーンサイドバンカー
・練習場、ミニパットコース、Par3での9ホールコース(前方ティー)


エビデンスGolf(ジュニア編)

 この世代では将来的にバランスを保ちながらクラブを操作できるようになるための運動技術の習得を目指します。

一般的な競技者としての能力育成
・疾走、跳躍、投動作などの基礎運動により、筋力・持久力・柔軟性・調整能の発達を目指す。
・1000ヤード以内の9ホール(Par 3レイアウト)
・パッティング、チッピング、フルスイング、グリーンサイドバンカーに加えて、グリーンの読み方とクラブ選択の理解を進める

なお、それぞれの練習は30-60分程度に収め、練習内容の80%はランダム練習(※参照)にして、長時間のブロック練習(※参照)にならないように注意する。週あたり1~5時間の練習時間に留める。

※【ランダム練習】複数の運動スキル(例えばA,B,C)を無作為な順序(例えばACBCAB…)で練習する方法。
【ブロック練習】複数の運動スキル(例えばA,B,C)を練習する場合,ある1つのスキルを繰り返し練習してから次のスキルの練習に移ること(例えばAAABBBCCC)。
(引用 「スポーツ科学事典」p775(社)日本体育学会監修 2006年 平凡社)


エビデンスGolf(ジュニア編)

 子供にとって急激な成長過程であるため、この世代において試合に出場する場合は、結果に優先度を置くことを避ける。またゴルフを春から夏に取り組む場合は、秋から冬は異なるスポーツを実践することも重要である。

・フェアウェイバンカーや特別なショット(ノックダウンショット、フロップショット)の練習
・コース長の目安、(男性):5600-6600ヤード、(女性):5200-6000ヤード
・様々な環境下において1回あたり45-90分のランダム練習を主とする。練習時間は週5-7時間に留める

能力指標
・18ホールでのパーオンの数
男性:5-9回, 女性5-9回
・50ヤード以内の寄せワンの数
男性:20-40% (フェアウェイから)、20-30% (バンカーから)
女性:20-40% (フェアウェイから)、15-25% (バンカーから)
・パッティング確率
男性:(1-3フィート)90%以上、(4-5フィート)50-70% 、(6-10フィート)25-35%、(11-15フィート)8-15%
女性: (1-3フィート)85%以上、(4-5フィート)50-70% 、(6-10フィート)25-35% 、(11-15フィート)8-15%


エビデンスGolf(ジュニア編)


エビデンスGolf(ジュニア編)

 各世代における練習方法や練習時間に関する基準を紹介しました。
一方で、打撃練習での世代ごとの至適打撃数はどの程度であるべきかについて気になるところではありますが、これについては2015年度LTPDの一つ前の資料で紹介がなされています(引用2)。
LTPDでは、6-9歳の週あたりの打撃数を60-580球、8-12歳では550-1650球、11-16歳では1100-2200を基準とすべきと提示しています。
仮に我が国が諸外国よりスポーツに割くことの時間が少ないとするならば、より少ない打撃数の中で質の高い練習を各世代で実施することが必要といえます。
またアメリカのリトルリーグでは投球数に関するレギュレーションが各世代できっちりと設定されており、それを選手・コーチの間で共通理解がなされた中で指導が行われています(引用3)。
今後これらの資料のように国内のジュニアゴルファーに向けた指標を立案することは重要ではないかと考えられます。


エビデンスGolf(ジュニア編)

図1 ゴルファーの世代ごとの至適打撃数の指標(引用2, P55より改変)



引用1)Long Term Player Development Guide (2015). pp81, Developed in partnership with the PGA of Canada. https://golfcanada.ca/app/uploads/2015/01/2015_GC_LTPD_EN-FINAL-low.pdf
引用2) Long Term Player Development Guide for Golf in Canada (2012). pp68, http://www.rcga.org/_uploads/documents/Player%20Development/LTPD/Golf_In_Canada_low.pdf
引用3) https://www.littleleague.org/playing-rules/pitch-count/




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