エビデンスGolf ジュニア(小学校期)編 Vol.2


【著者】鈴木タケル(日本プロゴルフ協会会員)、
    一川大輔 (東洋大学 理工学部生体医工学科)
【監修】坂井昭彦(The 蔵ssic)
●テーマ:相対年齢効果
「ジュニア指導において出生月を考慮してあげることは大切です!」



エビデンスGolf(ジュニア編)


近年、ジュニア指導において、「相対年齢効果」を考慮する必要があるといわれています。相対年齢効果(※ relative age effect)とは、同じ学年における誕生日(実年齢)の相違が、学業やスポーツの成績などに与える影響のことを指します。日本の小学校では、ある年の4月2日生まれから翌年の4月1日生まれの児童が同じ学年となるように制度化されています。したがって、実年齢に対して最大で約1年の差が生じることになります。例えば、小学校1年生の6歳児にとってはこの差は大きく、精神的にも肉体的にも4月生まれと3月生まれを比較すると前者には有利に働くと推定されます。


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しかしながら、これまでスポーツ競技においてこの自然と実感されている事実は、年齢を重ねれば重ねるほど、この1・2歳の差は消失し、高校時代での最終的なスポーツ競技成績には関係がないだろうという見方がありました。この点において日本陸上競技選手権連盟は、児童期の運動体験や競技成績が、最終的な競技レベルにまで影響を及ぼしている可能性を指摘しています(文献1)。さらに2011年には各スポーツ種目の男性アスリート4318名を対象とし、誕生月を調査した研究があり、野球・サッカー・バレーボール・駅伝・バスケットボールにはこのような相対年齢効果が確認されています(文献2)。なおこの研究では、1月から3月生まれたアスリートの人数は他の月間に比べて有意に少ないという結果が報告されています。そしてゴルフの138名の結果をみると、4~6月は35名、7~9月は34名、10~12月は37名、1~3月は32名とほぼ均等の割合となっており、俗にいう早生まれ(1~3月生まれ)が選手層の分布に影響を及ぼしていることはないようです。これは、ゴルフが体力的要素よりもスキル主体の競技特性を有することが影響していると考えられ、小学校期には出生月よりもゴルフ経験月数でゴルフの競技力を計ることも大切であり、すなわち相対経験月数が重要と思われます。それゆえ小学生を対象とする指導においては、たとえば経験月数が10カ月の6歳児と経験月数が2カ月の8歳児では、実年齢が2歳上であっても、10カ月の経験値がある6歳児に8歳児の子どもが競技力で劣ってしまうことはよくあることです。


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サッカーや野球において相対年齢効果が存在する要因に、低学年期であっても4~6月生まれの児童は体力もあり競技力で優位に立つ経験が多いことから、自己効力感(※)が育ちやすいことも推測できます。一方で、早生まれの児童に対しては、指導者は相対年齢効果が存在することを理解し、自己効力感が育ちにくいことを考慮して指導に取り組む必要があるでしょう。特に、野球やサッカーなどの団体競技のなかでは試合に出られる子どもとそうでない子どもには、技量や自己効力感にのちのち差が大きくなると予想されます。



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ゴルフは個人競技ではありますが、スクールに所属する形で団体練習を行うこともあります。彼らが所属する団体のなかで、フィジカルトレーニングでは相対年齢効果を加味してあげて、ゴルフの競技力については相対経験月数を十分に考慮することで、自己効力感が良い方向に育つようになるでしょう。また野球やサッカーにみられる選抜・推薦システムでは、小学校や中学校期の成績が良ければ、強豪のチームに進めるというようにして相対年齢効果を助長している可能性もあります。幸いゴルフは個人競技なので、必ずしも強い団体に入る必要性も少なく、試合機会に恵まれないことも比較的少ない競技といえます。仮にジュニア時代に好成績を出せなくても競技を続けられる環境や豊かな心境を作ってあげることは大切であり、晩熟型選手をドロップアウトさせないための努力も講じていくことも課題といえます。


エビデンスGolf(ジュニア編)

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※相対年齢効果
同じ学年における誕生日(実年齢)の相違が、学業やスポーツの成績などに与える影響のこと

※自己効力感
自身の向上可能性への期待感や信頼感、有能感。




引用文献
(1)日本陸上連盟公式サイト タレントトランスファーガイド A4版 https://www.jaaf.or.jp/pdf/development/A4_p4.pdf
(2) Nakata, H., & Sakamoto, K. (2011). Relative age effect in Japanese male athletes. Perceptual and motor skills, 113(2), 570-574.




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