エビデンスGolf~「感覚ゴルフ」から「スポーツ科学的ゴルフ」の時代へ Vol.7


【著者】鈴木タケル(日本プロゴルフ協会会員)、
    一川大輔 (東洋大学 理工学部生体医工学科)
【監修】坂井昭彦(The 蔵ssic)
●テーマ:グリーン面の凸凹
「完璧な読みとストロークが出来たとしても100%カップインできない理由」



 前回まで、パッティングパフォーマンスにおけるカップイン寄与率の高い事項を順番に、グリーンの読み(60%)、技術(34%)と2大要因について説明してきました。
今回は、グリーン面の凸凹(6%)について説明します(文献1:図1)。
実は、グリーン面の凸凹は6%の寄与率となっていますが、実験の手法やグリーンコンディションにより、さらに大きな影響を与える可能性があります。
グリーンの凸凹の影響とは、わかりやすくいえばグリーン上でボールを転がした時に起こる転がりのイレギュラー度合いのことです。
平らにみえるグリーン表面ですが、実は表面は平らではなく、わずかな凸凹があるために肉眼で確認できないレベルでも不規則な転がりをしています。
今回はこのわずかに起こるグリーン上でのイレギュラーの影響を説明します。



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図1 パッティングパフォーマンスを決定する主な要因モデル(文献(1)p7より引用改変)



 グリーン面の影響を理解するには、Karlsen (2010)の論文でも引用されていますが、Pelz (1989)の行った実験がわかりやすいと思われます(文献2, 3)。
彼らは、トゥルーローラーというボールを同じところに転がすことのできる機材を使用して、約3.6mの距離から実験を行っています。
実験によれば、トーナメント試合前の午前中にグリーンの芝生を刈ったばかりで、よく整えられた状態においてボールを転がしても73%のカップイン成功率にしか至らなかったと報告しています。
しかも試合後に同様の実験を行った場合は、30%の成功率まで下がるという結果でした(図2)。
グリーン面の凸凹の影響は、距離にもよりますがグリーンコンディションにより27%~70%と影響の幅があるといえそうです。
トーナメントを行うようなグリーンコンディションの質が高い場所でさえ足跡や草、泥や小石、ボール落下の跡などの凸凹がグリーン表面に存在し、どんなに完璧なストロークを行ったとしても全てカップインできない結果となっています。
したがって、パッティングにおいて完璧に運 (Luck) の要素を排除することは不可能であり、そこがゴルフゲームとしての魅力であることも強く理解しておく必要があります。
しかしながら、優れた読みと技術があれば当然カップイン率を高めることはできます。
我々ゴルファーは、読みや技術を磨く自分にできる努力を惜しまず、結果は神のみぞ知るという精神で取り組むことも必要かもしれません。



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図2 試合前後でのグリーン不均一性の比較 (文献(2)P31-37より引用改変)



 ボールの直進性について考えると、仮に正確にパッティングされたボールであってもカップに近寄るにつれてボールスピードは減速するために、カップ付近ではより直進性への影響が大きくなります。(解説 グリーン面の凸凹の影響によってボールスピードが落ちるわけではない、カップ付近で止める距離感で打つから減速する)
これは、自転車でゆっくりとまっすぐ進むことが難しいことや、スキーでもゆっくり滑るとかえって荒れたゲレンデの影響を受けやすくなることと似ています。
そのためパッティングでは、カップ丁度のジャストタッチで打つよりもカップの後ろ側の淵から43cmオーバーする程度が最もカップイン率を高められることをPelzの実験結果から提唱しています(文献2)。



 グリーンの凸凹の影響は方向だけでなく距離にも影響を与えます。
Koslow and Wenos(1998)は、Pelzと同様の機材(傾斜台)を使用して距離の変動性について6m距離で実験を行い、その結果、約0.9%の距離の変動性があることを発見しています(文献4)。
6m距離を転がした場合、約6cm程度のばらつきが出る結果であれば、方向性の影響と比較するとそれほど大きくないと考えて良さそうです。
しかしながら、ボール落下の跡やグリーン上に置くボールマーク(コイン等)など影響の大きなものに当たった場合は、距離と方向に対する大きなイレギュラーに繋がるので注意は必要です。



 過去のグリーンに比べ、近年のグリーンクオリティは高くなってきており、過去の実験で推定された割合よりも、いくらかグリーン面の凸凹の影響は少なくなってきていると思われます。
それは、グリーンに使う芝生の品種改良、グリーンメンテナンスの進歩、芝刈り機の進化などに起因しています。
良いパッティングをしたければ、質の高いグリーンコンディションのゴルフ場に行くことも、あながち間違いでもないといえます。





引用文献
(1) Karlsen, J. (2010). Performance in golf putting. Dissertation from the Norwegian school of sport sciences.
(2) Pelz, D., & Mastroni, N. (2004). Putt Like the Pros: Dave Pelz's Scientific Way to Improving Your Stroke, Reading Greens, and Lowering Your Score: Aurum.
(3) Pelz, D., 児玉 光雄 (翻訳). (1999) パッティングの科学. ベースボールマガジン社. 159
(4) Koslow, R., & Wenos, D. (1998). Realistic expectations on the putting green: Within and between days trueness of roll. Perceptual and motor skills, 87(3_suppl), 1441-1442.




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エビデンスGolf(ジュニア編)